とある独身サラリーマンがおりました。どこにでも居るごく普通のサラリーマンだけど、そこは独身男の特権としてそこそこ自由な生活を満喫しておったそうな。
彼はさまざまなこだわりを持ち、色んな事に興味津々で生きております。そんな独身男の次の野望は茅ヶ崎あたりに住んで、自分好みに部屋をコツコツ直しながら生活することでした。ところが茅ヶ崎という「ブランド」はやっぱり高嶺の花だったのさ。現実はそんなに甘くはないのだ。でも、ブランドより住環境優先で考えたらけっこう手が届く物件はありそうだ。そうして本格的に部屋探しをはじめたんだ。

ところが、いざ実際の物件を見ても購入の判断が出来なかったんだ。一般的な間取りのいたって普通の部屋を見ても最終的な自分好みの部屋をイメージできない。設備や構造も不安だ。高い買い物だから失敗はしたくない。買う前にプロに見てもらう事なんて可能なんだろうか?
そこでベースのリフォームはココと決めていたスタジオダックスにダメもとで連絡してみたんだ。自身の感性や予算、やりたい事をぶつけてみると、面白がって付き合ってくれる事になったのさ。めでたしめでたし。

その直後にまさかの「ダメ出し」くらうとはその時点では想像もしていなかったんだけど・・・。

通常、購入前の物件を見に行く事はまずないけど、Tさんの話は面白くなりそうだったのでちょっと乗っかってみるか。その物件は閑静な街にニョッキリそびえる古い高層マンションの一室。眺望がすばらしい部屋でした。でもね・・天井(階高)がやたら低い、設備が古くて交換もむつかしい構造、電気容量も足りない増やせない、そしてムダに広すぎる。Tさんは眺望に舞い上がって、他はぜんぜん見えていないみたいだなぁ。
単なるリフォーム業者である我々が物件購入を決める立場にはないので、Tさんに最終判断の材料であるメリットとデメリットを事務的に提示するのみです。まぁ、デメリットばかりなので実質はダメ出しでしたが・・(汗)その後、Tさんはこの物件の購入は見送られました。よかった。よかった。

その約3ヶ月後にTさんから連絡があり、新しい物件を見てほしいとの事。イソイソ出かけて部屋に入るなり「あっこりゃあイイね!」です。前回の教訓を生かして、良い物件を見つけてきました。
低層マンションだけど丘の斜面に建つ階段状の建物は、広いルーフバルコニーと抜群の眺望を提供してくれます。狭い普通の部屋だけど、スケルトンワンルームにするだけでイメージを具現化できそうだ。装飾を排除し、機能と無垢な素材だけでシンプルに空間を構成し「何もない部屋」を演出しよう。

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