ご夫婦共に料理を楽しまれるNさんにとって、マンション購入時のままで古く無駄が多いキッチンは味はあっても使いにくいモノでした。いろいろ知恵をしぼってやりくりしてきたけどヤッパリダメ!せめてあこがれのミーレ食洗機だけでも組込めないかと思ったら現状のままでは物理的に組み込む事は不可能と判明・・。国産の食洗機ならなんとかなるそうだけど、妥協するくらいならやらない方がまだマシだ。

そうは言ってもやっぱりなんとかしたいからキッチンメーカーのショールームを徘徊する日々が始まります。
その中の一つ「トーヨーキッチン」の作りの良さとシンプルなフォルム、3Dシンクの使い易さにホレこんでプランと見積の依頼をしますが、既存キッチンの交換程度しか提案してくれません。冷蔵庫すらまともに置けない、作業スペースが狭い、使い勝手は考えていない・・既存キッチンの欠点はまったく解消されていない「キレイになるだけ」のプランばかりを提案してきます・・。

特にマンションの場合、ムツカシイ排水の処理などを含めてキッチン空間全体のデザインができないとプラン変更は無理です。どんなに優れたプロダクトであろうとも現状キッチンの問題点を解消出来ていない計画では何度提案を受けてもNさんが納得できるモノは出てくるハズがありません。最終的にはど~しても使いたかった3Dシンクだけがほしいので「カウンタートップだけ売ってくれないの?」と聞いてみたら「ダメです(キッパリ)」だって・・。う〜

そんな経緯でウチに舞い込んで来たキッチンリフォームの話。さてと、まずはトーヨーキッチンの研究から始めましょうか。

他のキッチンメーカーとは違った独自のスタイルや販路でかなり強気の商売をしていますね。ウン、嫌いじゃないな。
商品の作りやデザインはイイけどウチの代理店ではトーヨーキッチンを扱っていないから「部品」としてのパーツのみの調達はなかなか手強そうだ。だから最初は既成製品のユニットを組み合わせてプランしていきますがやっぱりすぐに限界が見えてきます。しかもトーヨーキッチンの製品を知れば知るほど意匠優先のアラも目立ってきました。う〜ん・・どうしたモノか?

そこで3Dシンクが付いている「ISOLA TAVO」と言う既製品テーブルのみトーヨーキッチンを使用して、その他の部分はオリジナルキッチンを作る事にやっと落ち着きます。
フ~やっといつものペースに戻ったぞ。

ご夫婦二人でキッチンに入れる余裕の空間がご要望。そして食器類も多くない。だから全部がオープンなキッチンです。最低限の動線で必要なモノにすぐ手が届き、広い作業スペースは無造作にモノを置いてもジャマになりません。ネックだった冷蔵庫も定位置を与えられ、念願のミーレ食洗機も毎日稼働中です。素材の質感にこだわりのあるNさんも満足の無垢なキッチンはメンテナンスも楽で時を重ねるごとに味が出てきます。

引渡の当日にNさんから「昔からこのキッチンだったみたいに部屋に馴染んでる」と言われニヤリ。
使い方を限定しない「自由なキッチン」が完成しました。

LDKやDKなど、キッチンを含んだ空間全体のリフォームは比較的自由にキッチンをプランできるのですが、キッチンのみのリフォームではその限られた空間の中だけで意匠と機能を実現させる為とてもムツカシイ。
左のイメージはほぼ最終案ですが、ここにたどり着くまで数十の案がボツになっています。その中の最終案一歩手前が右のイメージ。キッチンメーカーの既成キッチンからスタートした計画だったので、その名残がまだ見えます。そして決定的に違うのが最終案とは左右反転です。これは作業動線よりも排水経路を優先した為。ボツになった一番の要因です。

機能的で美しい、そして昔からココにあったかの様なまわりにとけ込むデザイン。それらがキッチンリフォームのキモですね。

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