東京湾岸に面する天王洲の高層マンション。その35階のお部屋を購入されたのは以前からWorksで「高輪N邸」として紹介していたNさんでした。
今住んでいる高輪のお部屋をどうするかも含めて相談を受けたのは、高層マンション完成の1年以上も前の事。だからNさんも我々もぜんぜん実感のわかない状態で基本構想を語り合う程度でした。
新築物件だしそれなりにグレードの高い仕様らしいので、キッチンや水まわりなどの設備関係はそのまま利用し、全体の模様替え、大量の洋服収納、そして同居のワンコ達の「犬小屋」の提案(笑)が中心となりそうです。
それから約1年後、オプション工事なども盛り込まれた物件の最終図面が出て来たところで具体的な構想を練ります。やがてマンションが完成し、引渡された直後の真新しいお部屋に伺います。全面ガラス張りの35階の部屋はウソみたいな東京湾岸の非日常的な大パノラマが広がり、下を見ると足がすくみます。
「オレは住めんな・・」
毎日多忙な日常をお過ごしのNさんにとってはこの非日常的な空間こそ日常をリセットできる安らげる場所なのかもしれませんね。だから落ち着いた大人の空間をめざしますよ。
床は床暖房入りでワンコもいるので既存フローリングのままとし、壁天井を珪藻土で温かく仕上げます。明かりを落として夜景を楽しみながらの語らい、皆がワイワイ集まって東京湾花火を堪能できる特等席。 都心ならではの大人の隠れ家です。
「この殺風景な壁をなんとかしたいんだけど・・」
とNさんが突然言いだした。持ってきたイメージ写真には中国のアンティークスクリーンが写っています。「店舗じゃないんだから~」と一度は逃げてみたものの、付き合いの長いNさんが一度言ったら聞かない事は解ってましたよ(大汗)
機能がない飾りの造作って住空間では一番難しいのよ・・。しかもアンティークスクリーンとか・・ウ〜ン・・。
そして数週間、ひねり出したのがコレ。 フ~なんとか収まったねェ・・。久々に冷や汗かきました(苦笑)
当初予定になかったアンティークスクリーン造作と相まって無国籍な大人の空間に仕上がりました。
竣工してから約1年後、NさんからEメールが届きました。ワンコが3匹に増えたコト、だから既存のままだったフローリングがキズだらけ。しかもかなり濃い茶色なので毛やホコリが目立って掃除が大変なんだとか。
やっぱりね・・前回工事の最後にクリーニングしたけど、いくらキレイにしても人が歩く度に汚れていっちゃう・・・床の色と光の加減で汚れが目立っちゃうんだよね~。
ワンコのソソウを考えると拭ける素材がイイけど、既存床には一般的な床暖房が入っているので無垢フローリングはムリ。フワフワの遮音床なのでタイル系は目地が割れちゃうからやっぱりダメ。そうなるとじゅうたん系しかないでしょうね。発想を変えれば拭けないけど掃除機だけで掃除が済んじゃう。タイルカーペットにしておけば、もしソソウがあったら部分的に交換することも出来ます。マヤヘンプという麻のタイルカーペットは自然な素材なのでヒトとワンコに優しく足触りも良好です。大人の空間にもマッチしますね。
寝室にはもともと大型のクローゼットがプランされていました。そこをドッグハウス(犬小屋)にリフォームします。
ガラリ戸の奥が1部屋全部を使った新しいウォークインクローゼット、腰壁の部分が元クローゼットをリフォームしたドッグハウスです。3匹達には決して広いとは言えないけど、専用のお部屋を寝室脇に与えてもらえるワンコ達。家族の一員として当然の権利なんです!
ン~やっぱり贅沢か?
約8畳の個室一つをまるまる使ってウォークインクローゼットを造作します。かなり充実させたつもりだけど、それでも納まりきらない量かも?
・・もう知らない・・(苦笑)
高層マンションでは風の影響や安全の為に少ししか窓が開かない構造となっている場合がほとんどです。人工的な空調の中だけで生活する事はあまり奨められるモノではないですね。だからちょっとでも外の空気に触れられるバルコニーは貴重な空間となります。しかし高層からの物の落下など絶対あってはならないので、そこの造作は最小限にとどめる必要はありそうです。
今後どんどん増えていくであろう高層マンション。地面から離れるほどに非日常が増します。商空間ならまだしも住空間としては今までとは違った新しいアプローチの住空間造りが必要になりそうですね。そんな事を感じる湾岸リゾートの完成です。
(おわり)
場所:東京都港区/新築分譲高層マンション35階部分
規模:水まわりを除く約56平米部分リフォーム
床:マヤヘンプタイルタイプ貼り
一部既存床のまま
壁:珪藻土、一部既存クロスのまま
天井:珪藻土、一部既存クロスのまま
その他:アンティークスクリーン壁造作
ウォークインクローゼット造作
無垢引戸造作
ドッグハウス造作
オーブン用100V専用回路配線工事
ウッドデッキ、エアコン屋外機カバー造作
設計・施工:スタジオダックス
Photo:SIGMA SD14/10-20mm EX DC